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 UV露光機作成の最終回である。前回までで本体の作成はあらかた終わった。今日は現場セットまで進めてしまおう。

<蛍光管のセットと点灯試験>
 UV管を取付ける。ピンを縦に差し込んで90度回転させる。間隔が7㎜しかないため、間に指が入らない。したがって端の管から、順番に付けていかなければならない。
  AC電源につなぎ点灯してみる。インバータのおかげで、瞬時に一斉点灯するのは気持ちよい。わずかのウオーミングアップで安定した。照度のむらもなさそうだ。
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<暗室にて稼働にセット>
 暗室に持ち込み使用状態にセットして撮影。前面の黒幕は巻き上げてある。本体は組み合わせ自由のパイプ棚を利用して浮かせ、上部には木板のふたをしてあるが、ふた周囲の隙間は、以前にも説明した熱気逃がしの穴である。
 下に置いてあるガラス付きの撮り枠は自作のバキュームイーゼル。露光機にあわせ大きくする必要があるので、いずれこの製作法も載せたいと思う。また、右下のボタン類のついた箱は、引き伸ばし機用の露光タイマーで、そのまま使えている。
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 以上で20W×10管のUV露光機の製作記事は終了とする。制作費は、手持ちの材料や、他の工作のための余分買いなどで積算はむずかしいが、蛍光管代を除いて総額4万円以内に収まっているようだ。
 UV露光機の製作をつづける。今日は完成できるか。

<電源ボードの固定と配線>
 位置決めをした電源ボードを固定し、配線を完了した。ボード裏をコードが通るため、8㎜ほどスペーサーで浮かしてネジ止めしている。横に渡した細い棒は、配線のまとめと固定のための押さえである。また、ボード下から出てくるコードはUターンさせるので、これがないと基盤上のピンに負担がかかる。長い方のコードが不揃いに浮いていてみっともないが、どうせ蓋で見えなくなるし、要所は留めてあるのでこれでよい。
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<AC電源コードを付ける>
 差し込みプラグ付きAC電源コードを付けた。ボックスの横の適当な位置に穴を開けて通してある。抜け止めは絶縁テープを巻いて太くしただけである。また、前機では取り付けたヒューズボックスも無い。個々のインバータ基盤上にサーマルプロテクタ、ヒューズが内蔵されているので不要とした。更に電源スイッチの類も、引き伸ばし機タイマーに繋ぐので、これも省略した。
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<光源部内面に反射板を貼る>
 蛍光管の背面にあたる中底に1ミリ厚のアルミ板を貼った。以前の写真で分かるように、この下には横桟があって10㎜ほど浮いている。点灯時の発熱を、直接アルミから底板→電源ボードと移さぬようにと考えたためである。熱気は両袖の隙間と丸穴を通して、上蓋の気抜きから逃がす。もっとも下部が全開なのだし、一回の点灯時間が数分であれば、発熱による事故はまず無いことは経験でわかっている。側面のアルミは接着剤貼りをした。
 アルミ板がつや消しなのは、乱反射のある凹凸パターンの板が手に入らなかったため、細かい紙ヤスリをかけたからである。しかしどうも無駄な細工のようで、元々の鏡面でよかったと思われる。そもそもこれほど密に蛍光管を接して並べた場合、背面の反射板はあまり効果を持たないのではないかと思われる。側面も同様である。それでも無いよりは有った方が精神的にもよい!
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==あとは、上蓋となる板を取り付ければ完成である。その様子は次回。==
 [カーボンプリントの技法を概説1]で紹介した「アルス最新冩眞大講座」(昭和10年発行)という本には、特殊印画法として五種類のプロセスが解説されている。その中のカーボン印画法中に、当時市販のカーボンティシュ(カーボン・チッチュと表記)のリストが載っている。前書きとして、『市販品の内、本邦にて多く使用されてゐるのは英國のオートタイプ社のもので次の如き色調のものがある。』とあり、そしてなんと37色の品名が挙げられているのである。その中には、アイボリー・ブラックやダーク・ブリュー、ヴァンダイキ・ブラウンなど、ほぼ想像のつく色もあるが、ポートレート・ブラウンやボットル・グリーン、サングインなどはいったいどんな色だったのか興味深い。とにかく、当時欧米では、カーボンプリントが盛んであったことがうかがえるのである。しかし一方、『自製することも出来るが、餘程多量に使用するのでなければ市販品を使用した方がよい』ともあるから、当時もカーボンティシュの作成は面倒とされていたのだろう。ともかく、今は叶わぬことといえ、そのオートタイプ社の「チッチュ」の色37色を並べて見てみたいものである。
 ところで、寒色系の作品ばかりが続いたので、暖色を見ていただく。私の初期の作なので、はっきりいって出来はよくない。それでも私にとって、初めて黒以外でプリントした記念の色である。
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  205×280㎜
 露光機製作の続きを書く。前回は蛍光管ソケットの固定チャンネルを2本と、電源ボードを作成した。これから、それらをボックスに取り付けることにする。

<ソケットチャンネルの取付け>
■ボックスの中底の深い側に木ネジ止めした。この写真では見えないが、この中底の両端(チャンネルの下)
 には15㎜ほどの隙間が開けてある。この隙間は配線のためと、見えている丸穴と合わせて、熱気を逃がすた
 めの通気穴になる。
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■両側の取り付け完了。さらに中底の両端の隙間から、裏側にコードを廻してある。重要なことは、この状態
 で蛍光管が全管無理なく(がたつきもなく)セットできるように、位置調整することである。
 横向きに打ってある桟は、中央と上下が反射板を取付けるためのもの。他の二本は底板の補強材。
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■裏側の状態、コードをU字釘で固定した。裏側と書いてきたが、こちらが使用時には上面になる。この上に
 基盤が付き、更にその上に蓋板をかぶせる。
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■基盤位置を決めるために仮置きしてみる。ボックスの中央でもよいが、この位置でのコードの長さを決めて
 ある。基盤の出力ピンが内側である。
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== 今日はここまで ==
 今日はカーボンプリントのプロセスを、ごく簡単に説明したい。もしこれを読んで興味をお持ちになったら、今後も技法に関したことを綴っていくので、つづけてご覧いただきたい。また、自分でもやってみたいと思われたら、先に上げた図書やHPを活用なさることをお勧めする。(ただし、アルスの本は入手困難と思う)
 さて、次の写真を見ていただきたい。
カーボンプリントの技法を概説2_b0229474_19581233.jpg

①はカーボンティシュとよばれる紙である。ティシュとはtissueで薄紙のこと。
 その上にカーボン(顔料)をゼラチンに溶いたものが厚く塗られている。実際には紙自体もそれほど薄いも
 のではない。
②はフィルムネガティブ。密着プリントなので等倍のネガが必要である。これはインクジェットで作ったデジ
  タルネガ。
③は画像を転写させる紙、一度の転写(単転写)で済むなら、これが仕上げのベース(final support)になる。
  ①との接着をよくするため、ゼラチンをコーティングしてある。私は未経験だが、ガラスでも可能。
④は③の上に得られる最終イメージである。

 <作業の手順>
  1. カーボンティシュを必要な大きさにカットする。←3の乾燥の後でもよい
=以下は低照明下で行う=紫外線が出ない白熱灯なら、新聞が読める程度の明るさでよい。
 2. ティシュに二クロム酸カリあるいは二クロム酸アンモニウムで感光化する。←浸漬あるいは筆塗り
 3. 感光化したティシュを乾燥させる。←強制乾燥なら冷風程度で
 4. ティシュの上にネガを重ね、取り枠にセットする。←ネガの乳剤面を接する
 5. UV照明をあて、ゼラチンを硬化させる。→ネガの濃淡に応じた硬化がおきる
 6. バットに15℃以下の冷水を用意する。
 7. カーボンティシュより大きめの③のベース紙を用意する。←必ず大きさに十分余裕をみること
 8. 冷水中にティシュとベース紙を浸け、乳剤面どうしを合わせる。←気泡が入らぬよう注意
 9. 両者を張り合わせたまま引き出し、厚板ガラスなどの平滑な台の上に置く。
10. スクィージで強く擦り、合わせ面の水分を排除する。←全面を一度に擦れること
11. そのまましばらく(15分以上)放置して癒着を待つ。←上にガラス板を置き重しを載せてもよい
12. 温水(43℃)程度をバットに用意する。←実温度は①のゼラチンの溶融条件による
=以下は明るくしてかまわない=
13. 癒着したティシュとベース紙を温水に浸け、しばらく(数分)待つ。
14. ゼラチンが十分軟化したら、水中で両者を静かに剥がす。→カーボンティシュは捨てる
15. ベース紙を静かに揺すりながら、余分なカーボンを溶かし落とす。←必要なら温水を交換
16. 十分に現像したら引き上げ、水分を切る。←拭いたり触ったりはできない
17. 吊るすか水平に置くかして乾燥させる。←温風乾燥はしない
18. 完成→波打っている場合は冷温プレス

 以上がごく基本的な作成手順である。文字にすると、これでも煩雑に見えるが、実際の作業としては比較的単純なものである。もちろん、個々のプロセスでのパラメータや技術要領は必要であり、作者それぞれのノウハウがある。
 実はカーボンプリントでもっとも大切で、かつ難しいことは、良質のカーボンティシュを作ることなのだ。これについては別の機会に詳しく書きたい。