カテゴリ:カーボンプリントの魅力( 5 )

 プリンターの久保元幸さんに教えて頂いて、いくつかのカーボンプリントのサイトを知ることができた。興味のある方は6/20のブログコメントから参照してほしい。そこでは主にカーボンプロセスによるカラープリントを見ることができる。カーボンプリントはかなり厳密に色の指定が可能なので、早期からカラープリントは行われていた。最初のカラープリントがいつ行われたか知らなかったのだが、今回教えてていただいたサイトで知ることができた。それによればLouis Ducus du Hauronという人物が 1869年 にRGBの三色ピグメントで初めてカラーカーボンプリントを作成したとある。実物は残存するのだろうか。
 サイト上で見る現代の改良された技術を取り入れ、YMCKでプリントされたであろう画面はすばらしく美しい。ただ私がもどかしく感じるのは、パソコンモニター上で見ては、実際の画像が他のプリント法(機械印刷も含めて)にくらべ、どれほどのorijinalityを持っているのか分からないことだ。美しくはあるが、久保さんがよく使われる「物としての魅力」がいまひとつ伝わってこないことである。多分実物にはそれがあるのだろうが、現在のところそれを見る機会は無く残念なことである。
 私自身は、当分単色での試行をつづけなくてはならない。
b0229474_10592322.jpg

[PR]
 カーボンプリントにはもっぱらデジタルネガを作っている私だが、ついカメラもデジタルを使ってしまう。もちろんその方が都合がよいからだ。8×10やそれ以上のフィルムネガも試してみたいが、大判は4×5しか持たないので今のところ実現していない。あるとき、家の保管箱の中から、いつ手に入れたのかも覚えていないレンズが出てきた。古いスプリングカメラについていたらしい、compurシャッター付きのTessar2.8fだ。7.5㎝なので6×6判あたりと思える。そこで思いついた。このレンズを4×5カメラに付けてフィルムネガを作り、カーボンプリントすれば、名目上はオール古典技法ではないか。イメージサークルからして古典の雰囲気が漂うはず。などと、勝手に思い込んでやってみた。結果は(絵柄は無視して...)ネガ作りとプリント処理の相性が不足、といったところ。しかし面白い、またやってみよう。スキャンしてデジタルネガでも。
 
b0229474_20201875.jpg

画像部9.3×9.3㎝
[PR]
 [カーボンプリントの技法を概説1]で紹介した「アルス最新冩眞大講座」(昭和10年発行)という本には、特殊印画法として五種類のプロセスが解説されている。その中のカーボン印画法中に、当時市販のカーボンティシュ(カーボン・チッチュと表記)のリストが載っている。前書きとして、『市販品の内、本邦にて多く使用されてゐるのは英國のオートタイプ社のもので次の如き色調のものがある。』とあり、そしてなんと37色の品名が挙げられているのである。その中には、アイボリー・ブラックやダーク・ブリュー、ヴァンダイキ・ブラウンなど、ほぼ想像のつく色もあるが、ポートレート・ブラウンやボットル・グリーン、サングインなどはいったいどんな色だったのか興味深い。とにかく、当時欧米では、カーボンプリントが盛んであったことがうかがえるのである。しかし一方、『自製することも出来るが、餘程多量に使用するのでなければ市販品を使用した方がよい』ともあるから、当時もカーボンティシュの作成は面倒とされていたのだろう。ともかく、今は叶わぬことといえ、そのオートタイプ社の「チッチュ」の色37色を並べて見てみたいものである。
 ところで、寒色系の作品ばかりが続いたので、暖色を見ていただく。私の初期の作なので、はっきりいって出来はよくない。それでも私にとって、初めて黒以外でプリントした記念の色である。
b0229474_2391049.jpg

  205×280㎜
[PR]
 同一のネガで、色違いの顔料を使った作品を比較していただく。どちらも、チューブ入りの日本画用絵具を一色使用している。前に日本画の顔料は使いづらいと書いたが、簡便なチューブ絵具になっているものは、そのまま使えるものが多い。画面ではわかりにくと思うが、使用している絵具の彩度はほぼ同じある。見かけのコントラストはグレーのほうがやや強く感じる。私自身は、モノクロームプリントは黒が一番という主義で、銀塩なら温黒調/冷黒調などの色合いの違いが好きなのだ。しかし、せっかく色が自由に使えるカーボンプリントなのだから、このように同じ図柄の色を変えて楽しむこともまた、面白いとするのである。
b0229474_125734.jpg

b0229474_1255764.jpg

[PR]
  10日に載せたジア画像の対象がこのカーボンプリントである。プリントをデジカメで撮ったものをモニター上で見せるのでは、オリジナルの味が伝えられなくて残念だ。
 カーボンプリントには各種の色材が使えるが、このプリントは書画用の墨液を使用している。カーボンプロセスは暗部描写にすぐれるので、ローキーな絵柄に向くようだ。また、現像直後の画像からは想像できないほどの解像力を乾燥後に現す。過去には、欧米で図版印刷にも使われただけのことはある。一方日本人のカーボン作品は、ほとんどみることがない。私が思うに、カーボンプリントは比較的ドライで明快な印象を与えるので、ピクトリアリズム期の日本人には、情緒的に好まれなかったのではないか。しかし、現代のマテリアルやデジタル技術の応用で、技法/表現共に、いくらでも発展の可能性があり、私にとって魅力的なプロセスだ。
b0229474_1410381.jpg
作成oct.2010 (画像クリックで拡大)
[PR]