2012年 08月 25日 ( 1 )

 ガラスへのカーボンプリント(その1)で書けなかった技法上のことなど付け足しておこうと思う。
 今回使用したガラス板は「高透過ガラス」というもので、通常のガラスの持つ緑がかった性質を改善して無色透明性を強くした3ミリ厚のものである。しかし実用上は 2、3ミリの板厚では透過光が緑がかることはまず感じられないし、ましてモノクローム写真ではオーバークオリティーといえる。当然値段も高いのである。まずガラスは普通の窓ガラスなどに使われているもので十分だろう。
 次にガラスはそのままではゼラチンの接着が悪く、転写現像の際、画像が剥がれて流れてしまうのだ。そこでこれを防ぎ、ゼラチン膜が安定強固に張り付くための下地作りが必要になる。紙や布、木などの場合には硬度を上げた無色ゼラチンを下引きすることでOKである。古い日本の技法書を見るとガラス板への下引きもゼラチンの使用をあげているが、表面を磨りガラス状にして塗布しろと書かれている。そうすることでゼラチンの喰い付をよくするわけである。しかしこれは転写面をそのまま見る場合であって、私の目的とする背面に転写してガラスを透して見ることはできなくなる。
 金属やガラス、プラスチックなどに接着剤や塗料などが有効に働くよう、両者に対し親和性を持たせた(シラン化した)コーティング剤がある。これは無機質材と有機質材の接着の仲立ちをしてくれるのでカップリング剤とも呼ばれ、半導体製造でも重要な工業品らしい。これを利用することが最善の策である。B&Sのテキストによれば Amino Silane(アミノシラン) を塗布すると書かれている。ところが、これらが驚くほど高価なのである。安いものでも1キロ数万円もする。しかも工業用であるので、500gとか250mlなどとけちくさい量では販売されていない(そもそも一般販売がない)のである。これには困った。B&Sで販売していると書いてあるので、田町のPGさんに問い合わせたら、輸入は無理とのこと。他にはコロタイプで水ガラス(ケイ酸ナトリウム)を下引きに使うが、これは素人には水飴のように取り扱いがやっかいな代物。それに半透明の膜をつくるので却下。
 やがてふと思い出したのだが、世の中にはガラス絵というものがあるではないか。ガラスの裏側に絵筆で描く手法で表からガラスを透して見る、まさに私のやりたいことである。いぜん某画廊で見たガラス絵はたしかアクリル絵具使用とあった。アクリル絵具は水で溶くのが普通で、そのままではガラスにはじかれてしまう。となれば、あの絵のガラスにはなにか下地処理がしてあったはずである。さっそく画材カタログを漁って見たところそれはあった。ガラスや金属に水彩絵の具で描くためのコート剤として「ガラスプライマー」「メタルプライマー」などの名称で数社から販売されている。150mlで千円ほど。成分表示はないが、用途からしてこれもシラン系のものであろう。とにかくこうして最大の懸案は解決したのだった。
 早速買ってきたガラスプライマーでコーティングをした。実のところこれもまた結構やっかいなことがあったのだが子細は省略する。プライマー液は白濁していたので少し心配したが、コーティングはごく薄いので透明性は良好であった。かくしてサポートガラスの用意はできた。ガラスへの転写自体はそれほど難しいことではない。かえって紙のようにぐにゃぐにゃしないだけ楽なぐらいである。結果としてプライマーの働きは完璧であった。しかも塗布乾燥後は耐水性となり、ゼラチンのように温水で溶け出すこともない。かくしてガラスへのカーボンプリントは一応の完成を見たのである。
 しかしガラスは重い。今回は太子額サイズの3ミリ厚(高透過ガラスには2ミリ厚がない)、一枚づつの処理はいいとしてこれが数十枚まとまったらやっかいだ。紙のように保管箱に重ねて入れておくのも危険である。今後はアクリルなどの樹脂板の使用も検討したいとおもう。
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