2012年 08月 19日 ( 1 )

  ガラスへのカーボンプリントを試すと書いてから、えらく時間が過ぎてしまった。実はかなり前に一応の成果はあったのだが、ツイッターで一言書き込んだだけになっていた。ここでひとまず記録しておくことにする。
 何度も書いているようにカーボンプリントは、平滑面であればたいていの物に表現できる特性を持っている。ガラスへのプリントはもちろん昔から行われていて、その技法も多くの解説書にある。ただ、私の知る範囲では、それらのプリントはガラスを紙媒体と同様に扱うもので、乳白色のガラスの表面にプリントして観賞するものであった。私の場合はガラス板の湿板写真などに刺激を受けて思いついたことで、透明ガラスを通して転写された裏面を見るようにしたらどうか、という発想であった。つまりはあのガラスの裏側に絵筆で描く「ガラス絵」の写真版であろう。
 さて、試行の結果から言うと、実に精細かつ重厚な描写が出来ることが分かった。理由としてはカーボンプリントの全工程を通して、ガラス板が硬質の完全平滑面を保持するという効果である。紙のサポート体の場合には、紙質や下引きのゼラチンの影響が大きい。プリント面の凹凸や繊維質が吸水膨張したり乾燥収縮する際に、カーボンプリントの命である転写されたゼラチンのレリーフに与える影響が避けがたいのである。水彩紙の場合など、中目細目などの紙肌がそのままプリント表面に現れる。もちろん紙質が絵柄にある種の味わいを与える効果はあるわけで、それを目的とする場合には問題とするものではない。
 ガラスの場合にはどうか。ガラスは冷水や温水に浸けても(厳密な変化は置くとして)硬質平滑な表面を保つので、転写されたカーボンティシュのゼラチンは安定して付着していることができる。顔料の厚みの変化で階調を出すのがカーボンプリントだが、紙サポートの場合には現像直後の濡れた状態では見られるゼラチンのレリーフが、乾燥後にはまったくわからなくなる。ところが、ガラスサポートでは乾燥後もこのレリーフがはっきり目視できるのである。顔料レリーフを(当然乾燥収縮分はあるが)残した仕上がり、これが解像力の良さと立体感に通ずる描写となって現れるのだろうと思う。ただしこれはガラス本体を透かして見た場合で、つまりプリント面を「裏側」から見ている状態である。この場合ガラスに張り付いているゼラチン面を見るので見た目は完全に平滑である。プリント面を直接見た場合には、今度は逆にレリーフの存在が邪魔をして少し汚い絵面に見えるような印象である。
 ガラスプリントのプラス面ばかりを書いてきたので少しマイナス面も書く。ガラス板へのカーボンプリントは原則として単転写であり複転写はむずかしい。ガラスを一枚分透して見ることになるので、表面反射や映り込みが邪魔に思えることもある。これは紙プリントの額装で保護ガラスがかけられている場合と同様である。これがいやなら無反射コーティングガラス(ノングレアの磨りガラスではだめ)の利用が理想であるが、値段が桁外れに高い。またガラスは当然ながら重く、割れる恐れがあり、大判になるほど扱いが面倒である。更に私の手法(裏見)ではつや消しのマット状プリントは不可能である。
 技術的にいろいろ面倒なことがあるが、それを超えてガラスカーボンプリントは魅力的であると思う。工夫次第で様々なバリエーションが得られるであろう。これからとにかく作品として観賞に値するものを作りたい。
 技法的な説明は次回の記事に廻すことにする。

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ガラスへの転写現像が終了した状態。当然ハイライトは素抜けになる。

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裏に白紙をあてて通常のポジとなる。このバックシートの種類で印象を変えることができる。
ブログ写真では実物のクオリティーは出せないのでお許しを。
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