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 タイトルはおおげさだが、要するに紙の代りに板ガラスにカーボンプリントしようということである。ことわっておくとガラスへのカーボンプリントは何も私が初めてやるわけではない。乳白色のパールグラスへのプリントは昔からあるし、ガラスはおろか、金属でも木材でもプラスチックでも大抵のものへのプリントが可能といえる。それでは、わたしがガラスにそれをやろうとする目的は何かといえば、おおげさにいえば新しい表現への挑戦であり、もうひとつは、そこにガラスがあるから、である。写真技法の一つであるカーボントランスファーは、当然のごとく紙の上での表現を当たり前のこととしてきた。わたしも、最もオーソドックスな水彩紙を始め和紙(楮、雁皮)、プラスチック紙などにプリントしてみた。わたしの未熟な技術では何れも中途半端な出来ではある。それでも一応、なるほどこの媒体にはこういう具合になるのか、という感触は得たつもりである。一応分かると好奇心が他を探し始めるのが私の悪いところ。更に昨年、機会あってすばらしい古典技法を研究しておいでのみなさんに会うことができ、特にアンブロタイプや湿板のガラスネガやの美しさに惹かれたのだ。なるほどガラスは写真の中間媒体だけではないぞと得心したといえる。カーボンプリントが様々な媒体での表現が可能ならば、ガラスでの表現をぜひ試みてみたい。まあ、有り体に言えばままた浮気心が出たのである。
 さて、透明ガラスでいかにしていかなるイメージを現すか、取り寄せたガラスを見ながら考え始めている。


*何も出来ていないので、珍しくカラーを載せました。日の当たる雪原の枯れすすき。

※クリックで拡大


# by blue-carbon | 2012-01-28 20:21
 このところサボりつづけてろくなプリントもできていない。ブログの更新もサボりつづけてきたが、書き込み方を覚えているうちに更新することにした。(言い訳終わり)
 ネタがないので自分の暗室を一部紹介することにする。自宅の作業小屋の奥に自作したささやかな暗室である。あまりに狭い(四畳ほど)ので多目的に使うことができない。現在はカーボンプリントに特化した構成になっている。(その他のオルタナティブもむろん可能であるが)

今回は作業台と道具類を見ていただく。

 白く見える部分が5ミリ厚のガラスを貼った作業台である。周囲三方に縁が付けられ液体がこぼれないようにしてある。右側の端には縁がなく、また普段このガラスは傾斜がつけられていて、排水は右のシンクへと流れ落ちるようになっている。
 上に乗っているガラス板(8ミリ厚)がティッシュ類を置いてあれこれするテーブルである。カーボンティッシュを作るために水準器で正確に水平に調整している。なぜこのように二重の台にするかというと、フィルムや紙類にローラーやスキージがけをした時の水はけをよくするためと、ガラス板の温度調整が楽になるからである。広い面積が必要な時は取り外して下のガラスを水平にすることができる。

 次に道具類をお見せする。

 主だった道具類を一部並べてみた。ゴムローラーやスキージはフィルムや支持紙の圧着や水切りに使用する。細い棒のようなものは、カーボンティッシュを作る際のゼラチン塗布に使うアルミパイプと長尺ボルトである。また、下方の白い板のようなものはマグネットゴム板で、鉄板を敷いた上に張り付けてカーボンの厚みを調整するものである。
 写っている物の他にも湯煎ヒーター(前の写真の左横に少し写っている)やアクリル板、スポンジ類やブロアーなどいろいろと使用する。

もうひとつ欠かせないものがこれ。

カーボンプリントは作成の各段階で冷水や温水を多量に使う。しかもかなり温度管理を慎重にする必要がある。また、どこへでも自由に給水できることが作業効率上不可欠である。そこでこの温度調節栓につないだ手持ノズルが活躍する。といっても特別のものではなく、植木鉢などの水やり用にホームセンターで売っている散水ノズルである。
 UV露光機については以前のカテゴリをご覧いただきたい。
 地元の私営郷土博物館で、若手の作家や商店経営者が、バザールのようなものをやっているので行ってみた。新作の陶器や木工などの工芸品から雑多な骨董品、衣料服飾品からコーヒーやジャム、軽食などなど、実に多様な小店が並び、やはり若い客達で混み合っていた。その中の古本を扱う店の片隅に、ヨーロッパの古い絵はがきと書かれた箱があり、三四十枚のPost Cardが入っていた。見れば全て写真画像でしかも印刷ものはほとんどなく生写真である。こういったポストカード自体は珍しくもなく、古物としてありふれたものなのだが、私自身はこれまであまり詳しく見たことがなかった。値段も安かったので、これと思う物を五六枚買って帰った。
 家に帰りあらためて良く見ると実に興味深い。時代としてはほとんどが20世紀初頭ころの作成であろう。乾板密着によるプリントで、調色による耐久性をつけたものもある。サイズは9×13.5〜14㎝、日本で大手札と呼ばれたヨーロッパ規格の乾板をさらに横に伸ばしたポストカードサイズである。
 以下に少し紹介する。

これはイギリスのカード。St' GILES CATHEDRAL, EDINBURGH. の文字が見える。表には THIS IS A REAL PHOTOGRAPH とある。

これはドイツのカード。Frankfurt a. Main, Dom, Apostelaltar. とてもきれいな画像だ。縁なしの画像だがこんなに細い白縁を後で塗っている。ドイツらしいかも。

これもイギリスのカード。Catholic Church West Hill Wondsworth の手書き文字。

立派に銀が析出している。ダゲレオタイプのようだ。

これが初めて手に入れたカーボンプリントのポストカード。ルーペで見ると顔料の粒子がはっきり見える。残念ながら仕上げはあまりよくない。1576 MODANE--Ville とあるからフランス南東部の小さな町の風景のはず。数字は撮影年ではありえないので不明。

最後はイタリアのカード。表に ASSISI - S. Damiano. の文字。この画像はおどろくほど精細である。

建物正面の銅像の台座にはめ込まれた浮き彫りを、拡大して見ていただく。『最後の晩餐』であることがわかる。

※あまりに大量に作られたため、研究の対象にもされないようなヨーロッパのポストカードではあるが、なかなかどうして、じっくり見ていくと実に興味深く、また教えられることも多いものである。
 
 
# by blue-carbon | 2011-10-07 23:25
exPhotographyのarata氏とのツイッター交流で、Chiba-sistemという技法に魅かれるている。チバシステムとはもともと、千葉大学の大学院生である(あった?)Halvor Bjoerngaard氏の学位論文 A Non Toxic Alternative to the Dichromate Processesに書かれていた写真技法で、ネットでもアートフォト工房のMooMoo-ya氏が先駆的に紹介、研究をされている。私も以前にこの論文に目を通して見たのだが、なにせ全文英語であるから、私の錆び付いた英語力と化学力ではとても理解したとはいえなかった。論文内容はbichromate系の薬品に代わる安全なモノマー化剤を採用した顔料画像の形成で、ガムプリントとカーボンプリントに類似したプロセスが数種述べられている。これを読んだ当時私は、これではとても十分な階調は得られないだろうと勝手に判断し、興味は残しながらも追試などはやらなかった。最近arata氏のブログで氏がチバシステムを試行されていることを知り、教えを乞うた次第である。
 クロムに代わるモノマー化剤として、クエン酸アンモニウム鉄(ferric ammonium citrate)を使うことがこの技法の肝である。クエン酸アンモニウム第二鉄(以下AFCと略記)は貧血治療薬にも使われる医薬系の物質で、食品添加物としても使われている。つまりなめても(もちろん少量)安全性に問題ないわけだ。それよりも古典技法をやる人ならサイアノタイプの主剤として周知のことだろう。このAFCを用いてカーボンプリントを作りたいというのが私の願いなのである。
 そこでいきなりのカーボンプロセスは無謀なので、まずはチバシステムに沿った作成をarata氏の助けを借りながらやってみることにした。
 チバシステムの詳しいプロセスは前記のブログを参照願いたいが、簡単に書けばこのようなものだ。
 1. 紙(水彩画用紙が基本)にゼラチンで下引きをほどこす。
 2. 感光乳剤を作る。
      ゼラチン、AFC、顔料(水彩絵具)、精製水 の混合物
 3. 下引きした紙に2を塗布し、乾燥させる。
 4. ネガを重ねてUV露光する。
 6. オキシドール水溶液に短時間浸ける。
 7. 温水で現像、未硬化の顔料を抜く。
 8. 乾燥して完成
 以上のようにとてもシンプルな工程である。実際の論文ではパラメータを変化させた実験分析が細かく論述されているのだが、美術写真としての完成をめざしているわけではない。したがってわれわれは、この論文をもとに鑑賞に堪える画像を作りだすレシピを探し出さねばならないわけである。
 もっとも私は”下手の鉄砲も”の口で、まぐれ当たりを狙うしかないのであるが。

<画像が出ればもうけものでやってみた第一作、コーティングからして難しい、前途多難>

# by blue-carbon | 2011-09-15 12:40
 相変わらず水道水は高温だが、ともかく研究あそびと読む)は続けなければと、久しぶりにとっておきのカーボンティシュを取り出した。6月ころに作成した出来の良い純黒のものだ。おや、すこししんなりしている感じだ。表面に触ってみて不安がよぎる。あきらかに吸湿している。大雨もあって長くつづいた高温多湿の天候のせいだ。保管していた暗室には一応エアコンまがいのものはついているが、24時間つけっぱなしというわけにもいかず、一日に数時間しか使っていなかった。ティシュの端を切り取って43℃の温水につけてみる。いくら揺り動かしてもカーボンは溶け出してこない。47℃に上げてやっとにじむ程度にoozeしてきた。これでは実用にならない。つまりこのカーボンティシュは死んだのである。これがあと何枚あったか、まったく残念なことである。
 このように生のカーボンティシュは、高温や多湿にさらしていると、早ければ数日から数週間で不溶解に変質してしまうことが多いのだ。そんなことはわかっていたのだが、吸湿紙に挟んでおいたのでつい油断してしまった。つまり、自分の頭も高温多湿に犯されていたわけだ。
 あたらしくティシュ作りをする前に、専用保管箱を準備しなければならないだろう。残暑は続き、多湿はいつものことであるから。

写真ハ本文ト無関係デス
# by blue-carbon | 2011-09-03 10:30